日時:2020年10月26日(月)18:00-
演題:哺乳類系統における横隔膜の進化的起源
講演者:平沢達矢
要旨:
横隔膜は、胸腔と腹腔を仕切るシート状の骨格筋であり、呼吸の際に胸腔の容積を広げ肺に空気を取り込ませる機能を持つ。化石を手がかりにすると、横隔膜はペルム紀末(大気酸素レベルが急激に低下した時代)に哺乳類系統で進化したと推定されるが、哺乳類以外の脊椎動物では横隔膜と比較しうる構造がなく、どのように進化してきたのか、これまでまったくの謎であった。この問題に対し、胚発生における横隔膜の筋前駆細胞が特有の遺伝子発現を持ち分化が抑えられた状態で長距離移動する「移動性筋前駆細胞(MMP)」というタイプであることに注目、骨格形態と胚におけるMMPの分布の関係性から祖先動物におけるMMP分布を復元することで、横隔膜は前肢筋、特に肩甲下筋が重複することで成立した可能性が高いことが分かった。この進化は脊椎動物胚発生で頭尾軸方向の位置情報を司るHox遺伝子の発現パターンと関連していると予想され、本セミナーではそれに関する進行中の実験についても紹介する。