日時:2020年11月30日(月)18:00-
演題:「中赤外レーザー分光法を用いたCO2同位体種測定の展開」
講演者:狩野彰宏(地球生命圏科学講座)
要旨:
炭酸塩鉱物の同位体組成は古気候や物質循環の理解に大きく貢献してきたが,近年,炭酸凝集同位体 (47CO2) に代表されるように,炭酸塩-CO2のアイソトポログを用いたプロキシ開発が進展しつある。CO2のアイソトポログの測定は原理的に従来型の質量分析計ではできないが,アイソトポログの特性吸収線を読み取る赤外線レーザー分光計では可能である。より少量の試料で,あるいはより正確な測定結果を得るために,分析方法とともにハード面での開発も進みつつある。現時点では12C17O16Oと13C18O16Oについての測定が可能になり,数年以内に13C17O16O(存在度1.5ppm)の測定も可能になるだろう(Double clumped)。
セミナーでは,この方法により進展が見込まれる17O異常(12C17O16Oの存在度異常)についても解説する。陸成炭酸塩の17O異常は水蒸気発生時の湿度情報を保存していると思われ,石筍,土壌炭酸塩,蒸発成炭酸塩に応用できるだろう。また,陸棲脊椎動物の歯エナメル炭酸塩は大気酸素の低い17O異常を受け継ぎ,過去の動物の代謝様式の推定に使えるかもしれない。