日時:2024年5月20日(月) 17:30~18:30(発表45分,質疑15分)
講演者:鈴木庸平 准教授
場所:理学部1号館105号室
演題:世界最大のマグマ溜まりを掘り抜け! ブッシュフェルト複合岩体の大深度掘削による20億年前の原始生命探査
要旨:
原始生命探査は生命の起源を生物進化から制約する目的で、深海底熱水噴出孔や陸上温泉などの生命誕生の候補場で盛んに行われており、上部マントル物質として知られる超塩基性岩と水の反応場が第3の候補として近年注目される。火星の地球外生命探査において、形成年代が30億年より古い超塩基性岩の内部から現存生命や生命の痕跡を検出することを目的にサンプルリターンが計画されている。地球上の超塩基性岩を対象にした原始生命探査は、形成年代が300万年前と若い大西洋中央海嶺付近のロストシティーや形成年代が1億年前のオマーンオフィオライトで掘削調査が行われているが、形成年代が数十億年超えの岩体については掘削による微生物研究の事例がない。
20億年前に形成した地球上最大のマグマ溜りである、南アフリカのブッシュフェルト複合岩体が国際陸上科学掘削計画(ICDP)により掘削される。この巨大なマグマ溜りは、地殻に貫入したマントルであり、マグマ溜りを下位に行くほどマントルと組成が類似した超塩基性岩になる。ブッシュフェルト複合岩体は形成後の20億年間、変形や変成作用ほとんど被っておらず、マグマの冷却後から現在まで安定した地下微生物の生息場と考えられる。ブッシュフェルト複合岩体の下部には、世界最大の白金族元素の埋蔵量を誇るクロミウムに富む層が、上方からの地下水の侵入を阻み、最下部の超塩基性岩体には古原生代の熱水循環後に侵入した微生物が現在までその子孫を残していると期待される。最新のゲノム研究で、1億年程度は地下微生物が進化しないことが証明されており、本研究では20億年前に生息した地下微生物が同様に進化せずに存続しているか明らかにする。進化せずに存続している場合は、20億年前の生物を化石でなく直接調べることが可能になり、最終普遍共通祖先や初期生命進化の情報が新たに得られると期待される。